父のこと
いつ頃から、父を嫌うようになったのか
最初は、好きだったはずだ
祖母におぶわれながら「パパはいつスイカをかってきてくれるの?」と聞いたらしい
父が買ってきてくれた(んだと思う)白い犬のぬいぐるみが、お気に入りだったらしい
首にピンクのリボン(だったと思う)がついていて、その下の胸の部分が擦り切れて、中の藁が見えていても、まだ持っていた
父の自伝本には「毎週のように肩車して上野動物園に連れて行った」とある
記憶はない
小さい頃、父に「布団蒸し」された
ふとんの中に巻き込むように、ぐるぐる巻きにされた
苦しいし、怖いしで、私は泣き叫んだ
どういう理由で布団蒸しにされたのか、覚えていない
父が怒って、何かの罰でやられた、というよりも
私が布団にぐるぐる巻きにされて泣き叫ぶのを、父が面白がっていたような印象がある
私は、声がかれるほど叫び、布団から解放されても、ひっくひっく言いながら泣いたように思う
長崎に住んでいた頃、父と海に行った
背中に乗せて泳いでやる、というから父の背中におんぶのように乗っかったら
その後、海に潜ったので、私も水面下になった
そんな約束ではなかった
私が驚いて泣くのがおもしろかったんだろうか
長崎では、堤防からの釣りにも一緒に行ったが、つまらなかった
小袋に入ったお菓子を渡されて、それを食べ終わると
「帰ろうよー」とせがんだ
子供の頃は、父が正しくて、母がのろくて「できない人」なんだと思っていた
父が日頃から、母にそう言っていたからだと思う
ひどい時には、父と一緒になって母をけなしたように思う
バカにしていた、かもしれない
ある時期までは、私は独裁者である父の子分だった、かもしれない