私は厚かましい人は、嫌いだ
誘われもしないのに、自分から「○○ちゃんの学芸会、私も一緒に見に行っちゃおうかしら~」などと言い出すヘルパーKは、最初から好感が持てなかった
里帰りの時に、何度か会う機会があった
父のヘルパーとして、茶飲み友達として、公私にわたってお世話になっているから、会えば型通りにお礼を言ったが、こっちからお土産を用意して行って渡したりはしなかった
お世話になっているんだから、そうするものかな、と頭で考えはしたが
自分からそうしたい、という気持ちはないし
日頃から、父が食事に連れ出したりしてるから、それでいいだろうと思っていた
ヘルパーKは、世田谷の一軒家に寝たきりのご主人と二人暮らしだった(ご主人は、去年、亡くなったと聞いた)
父と妹は、同じマンションの別の棟に住んでいた
そのマンションは妹が入居した時点で新築で、緑も多くセンスのいい設計だ
セキュリティもしっかりしていて、鍵がないとロビーにも入れない
ロビーには受付嬢がいて、その脇に、小さいけれど中庭を望む、解放感があって居心地のいいコーヒーラウンジがあった
コーヒーや紅茶、ペストリーなどを格安で販売していて、お茶や水は無料だ
父は、Kに合鍵を渡していたので、マンションに自由に出入りできる彼女は。そのコーヒーラウンジを利用できるのが、うれしいと言っていた
ちゃっかりしている
彼女の家は、一軒家といっても、世田谷区にある普通の家だ
豪邸じゃない
ガラス張りで、天井の高い、ホテルのロビーのような空間で、ゆっくりお茶が飲めるのは、非日常感があって、楽しいだろう
気持ちはわかる
里帰り中のある日、父の部屋で、妹と彼女の息子ふたりと一緒に食事をしていると、ピンポンもならず、突然ドアが開く音がした
私は不審に思ったが、ドアを開けて「こんにちは~」と入ってきたのは、ヘルパーKだった
彼女が来るとは聞かされていなかった私は、Kがずかずかと入ってくるのに、嫌な気がしたが、父は妹たちは、格別驚いた風でもなかった
今思えば、こういう状況は、彼らにとっては、すでに当たり前のことだったんだろう
別の里帰りの時には、私が妹のところへ行っている間に、やってきた彼女が父を散歩に連れ出し、家に戻って父がいないのに気づいた私は大騒ぎした
大騒ぎするには、理由があった
前日の早朝4時頃、父は鍵も持たずに、ひとりで家を出て、エレベーターにのり、鍵がないと開けられないガラスドアを抜けて、あわやもうひとつのこれも鍵がないと戻って来られないガラスドアからマンションの外に出そうになって、こっそり後をつけていた私を驚かせたところだった
その事情を聞いているのに、私がいない時に、書置きも残さず、父を連れ出したことに私は激怒して、私は、Kに鍵を返すようきつく言い渡した
だが、その時は、何度やってもキーホルダーから鍵が外せないといい、後から、妹のところに鍵を返しに来たとき、彼女が言ったことに私は、また怒り心頭に達した
「お姉さんが、鍵をアメリカに持って行ってしまうかもしれないから、合鍵を作っておいたのよ」
犯罪である
そんなことがあっても、父はもちろんKを責めることはなく
一時は、私同様に怒っていた妹も、「彼女のもたらす便利さ 」にあらがえず、またぞろ彼女のもとへ戻って行った
父にとっても、妹にとっても、便利で有難い存在であり、寝たきりの夫とふたり暮らしのKにとっては、格好の息抜きとなっているんだから、3人それぞれ持ちつ持たれつ、助かっているんだから、蚊帳の外の私が文句をいう筋合いはない
昨年の9月に父が亡くなった後、その後も妹とKのつきあいが続いているのかどうか、私は知らない