父の血 その6
いつから父のことが嫌いになったのか、わからない
家の中で、正しいのは父ひとりだけだった
誕生日とかお出かけとか、楽しいはずの日は、必ずと言っていいほど
父の機嫌が悪くなることで、終わった
だから、楽しいはずの日も「最後はどうせパパの機嫌が悪くなるに違いない」と思うようになった
そして、予想通り、ほぼ毎回そうなった
楽しいはずの日を楽しみにしなくなった
どうせまた・・・と冷めた気持ちを持つようになった
外でご飯を食べれば、いつも母が同じものを注文する、といってバカにし
私が蕎麦屋で、うどんなんか注文しようものなら、「蕎麦屋でうどんなんて食うやつがあるかっ!」と頭ごなしに怒鳴られた
私が大人になり、父の日に妹とふたりで、父の日の花を注文したのに、どういう訳かその日に届かなかった
父は、花屋に電話して「注文通りに届かないとは、どういうことだっ!」とすごい剣幕で、電話の相手に怒鳴り散らした
私が年頃になってもなかなか嫁に行かないとなると
まずは、家族ぐるみでつきあっていた、その家の長男はどうかと言い出した
それがだめなら、また別の見合いの話を持ってきてが、乗り気でない私に向かって
「何が不満なんだ!」と文句をいう
私のことをいったい何だと思っていたんだろう?
大学に行かせ、一部上場の企業に勤めさせ、あとは嫁に行かせる
という「父の考える幸せ」という「路線」に私を乗せることは考えていても
「わたし」という娘が、どんな人間なのか、ということを、考えたことはあったんだろうか?
なかったように思う
会っても何も感じない人と結婚する気にはならなかったし
第一、尊敬どころか嫌っている父が持ってくる話だから、なおさら興味が持てなかった
そして何より、言い争いの絶えない家庭に育った私には、結婚に対するあこがれなんてこれっぽっちもなかった
ひとによっては、「だから自分は仲の良い家庭を」と考える人もいるようだが
私には、そんな意欲はまったくなかった